いよいよ発売!
レクチャーノート1
『歩行の臨床バイオメカニクス第二版』
神経系の制御や転倒予防の姿勢制御の内容を追加し、
30ページ増量!
■序
「歩行のバイオメカニクスと治療アプローチ」は,私が講演を依頼される頻度の高い講演テーマです.
座学の場合は1日,実技講習だと2日で行われるのが通常のパターンですが,情報量が多くて,なかなか受講する人達にはハードな講習会だと言えます.
受講している人達を見るとパワーポイントの配布資料に所狭しとメモを取っていらっしゃいます.たまに,どんな事を書き込んでくれているのか気になって覗いて見ることがありますが,本当沢山書き込まれているのに,頭が下がる思いです.
「きっとこんなに一生懸命に書いていたら,スライドを見てる暇も無いんじゃないかな…」と心配になることがあるくらいです.そのような受講生の姿を見ていると,「出来るだけ無駄な言葉を省いて,的確に伝えないといけないな~」と反省したりします.とにかく1日の講習会で話す情報量が多過ぎるのでしょう.それに加えて,配布資料に書き込みの量が多くなるのは,スライドが不親切だからなのかもしれません.
私のスライドには,ほとんど文章がありません.図や写真ばかりです.聞き手にイメージをしてもらいたいので,言語的な情報よりも視覚的な情報を多用しているのです.それに,文字ばかりのスライドよりも,絵だけのスライドの方が説明しやすいという発表者側の都合もあります.私のスライドは,自分が説明をし易くするためのツールなのかもしれません.「だから聞き手は,メモを必死に取らなくてはならないのだろう….」と,メモを必死に取られている皆さんを見ながら,ある時ふと思ったのです.
「スライドに文字による説明が少ないから,皆は,後でスライドだけ見ても,何を説明していたのか思い出せないのだ」と気付きました.これは,ビジュアルに偏った構成のスライドのマイナス面かもしれません.イメージはし易くなるだろうけど,もう少し文字情報が与えられないと,聞き手は後でもう一度復習するときに困ってしまうのではないでしょうか.
「それならば… 」と思い立ち,本書のレクチャーノートを作ることにしました.講習会で話す内容を文章化して書籍にまとめ,スライドと対応した構成で説明した解説本を作っておけば,講義を聞いてくれた人達が復習する時に便利だろうと考えたのです.いくつかある講習会のテーマの中から,まずは手始めに,『歩行の臨床バイオメカニクス』の講習内容を文字に起こして1冊の本にまとめてみました.忠実に講習会で話す内容を文章化するのは,なかなか難しい作業でした.自分としては,かなりの力作なので,ぜひ皆さまに役立てて頂きたいと思います.
2011年6月
石井 慎一郎
「レクチャーノート1
歩行の臨床バイオメカニクス 第二版」
■ 目次
第1章 歩行の基礎力学
二足歩行の単純力学モデル
二足歩行の力学的エネルギー
Rocker Function
歩行における3つの回転軸
第2章 Rocker Functionの役割
Heel Rockerの役割
Heel Rockerと衝撃吸収のメカニズム
Ankle Rockerの役割Ankle Rockerと重心の上昇
Ankle Rockerとブレーキング作用
Forefoot Rockerの役割
1. 重心軌道の上方修正
2. 重心軌道の方向修正
第3章 Rocker Functionの足部機能
足部の機能的ユニット
内側ユニットの安定化メカニズム
外側ユニットの安定化メカニズム
内側ユニットと外側ユニットを連結する筋群
Heel Rockerに必要な後足部の安定性
臨床的なヒント 25
Heel Rockerにおける後足部の動きと路面環境への適合
Heel Rockerと足関節の安定化
Ankle Rockerに必要な足部の機能解剖
Forefoot Rockerにおける足部の安定化
外側ユニットから内側ユニットへの床反力作用点の移動
後足部の動きと股関節周囲筋の作用
荷重応答期の膝関節の動的安定化
第4章 重心制御と股関節の両側活動
重心移動の力学
重心移動の主座としての股関節
重心制御と股関節の両側活動
歩行中の股関節両側活動
歩行中の股関節両側活動と体幹の安定
遊脚の制御と股関節機能
第5章 二足歩行の神経学的制御モデル
Central Pattern Generator
皮質下神経回路網
歩行リズムと筋緊張の統合機能
網様体と神経伝達物質
CPG不活化のための求心性入力
立脚後期の股関節伸展とCPGの不活化
立脚中期の機能的意味とCPG歩行
歩行の姿勢制御と治療戦略
歩き出しの神経回路
第6章 二足歩行の重心制御モデル
導入
静歩行と動歩行
自律二足歩行と動歩行
歩行における3つの転倒回避戦略
動歩行中の身体の力学的平衡
床反力制御
目標ゼロモーメントポイント制御
着地位置制御
動歩行の側方重心制御
ゼロモーメントポイントのリアルタイム制御
おわりに
参考文献
レクチャーノート2
『起居動作の臨床バイオメカニクス』
まえがき
臨床で行う動作分析は,「なぜ,その動作ができないのか?」「なぜ,その動作をすると痛みが出るのか?」という症例の動作の問題を抽出して,その原因を推論する作業です.ただ単に症例の異常運動パターンを言語的に記述する作業ではありません.症例の動作パターンを観察して,事細かく記述する作業は動作分析とは言いません.動作観察,動作記述とでも言いましょうか・・・動作のシークエンス(順序性)を言葉で表現したにすぎないのです.どんなに詳細に動作を言語化しても,原因はわかりません.「あー,そうやって動いてたんだね」という現象しか見えてこないのです.
動作分析は,動作のフォームを観察する作業ではありません.動作のフォームを観察して,ある現象についての原因を探る作業です.「なぜ,その動作ができないのか?」という問題を解くように分析をしなければなりません.動作のフォームを観察して,現象を抽出したら,その原因を考えるために評価を行う.これが動作分析です.現象を観察したら,仮説を立てて,その仮説を検証する.もちろん仮説はたくさん立つでしょう.仮説が立たなければ,分析はできないのです.
仮説を立てるためには,その動作のメカニズムを知っていなければなりません.なぜヒトが起き上がれるのか?起き上がり動作を可能にしているメカニズムを知っていれば,そのどれかが上手くいかないのかを調べることができます.寝返りや起き上がりを可能にしているメカニズムを知っていれば,動作を観察して現象から原因を導き出すことは,さほど難しい作業ではありません.本書は,動作分析と治療戦略の立案のために必要な動作のメカニズムを解説したものです.動作のメカニズムを熟知することが,動作分析から仮説を導き出し,治療戦略を立案するための近道だと考えます.
本書では,寝返り動作と起き上がり動作について解説をします.歩行については,すでに「レクチャーノート VOL.1 歩行の臨床バイオメカニクス」を執筆し,多くの理学療法士の方にお読み頂いています(筆者の予想をはるかに上回るほど・・・).実際の臨床場面では,歩行の問題もさることながら,寝返り動作や起き上がり動作が上手くできない症例を多く経験します.そうした症例を担当している多くの理学療法士の方々の臨床ニーズに応えられるものを世に出したいと思い「レクチャーノート VOL.2 起居動作の臨床バイオメカニクス」を発行することにしました.寝返り動作や起き上がり動作は,立ち上がり動作や歩行の姿勢制御の基礎となる多くの運動課題を内包する動作です.寝返り動作や起き上がり動作が出来なければ,立ち上がり動作も歩行も上手く行う事はできません.重心移動のためのプログラムは,寝返り動作から歩行まで一貫して同じです.ですから,寝返り動作で必要な本来の機能が欠落している症例は,起き上がり動作や,座位バランス,歩行にも大きな問題を抱える事になります.
歩行練習のための寝返り動作練習や,立ち上がり動作のための起き上がり動作練習という治療戦略は,重心の移動性課題の運動制御プログラムが寝返りから歩行まで共通している事を考えると十分に考えられる治療戦略だといえます.本書を読み進めて頂く中で,そうした基本動作の縦断的共通点と動作課題に個別な機能とをご理解頂けるはずです.
2012年1月25日
石井慎一郎
「レクチャーノート2 起居動作の臨床バイオメカニクス」
■ 目次
第1章 寝返り動作の臨床バイオメカニクス
動作概要
動作のシークエンス
Head Control
(1)Head Controlに対する基本解釈
(2)Head Controlの機能解剖学的考察
(3)Head Controlと後頭下筋群
肩甲帯の適切な配置 Scapula Set
(1)Scapula Setに関する基本解釈
(2)寝返り第1相におけるScapula Setの機能解剖学的考察
(3)寝返り第2相におけるScapula Setの機能解剖学的考察
(4)寝返り動作におけるScapula Setの波及効果
体軸内回旋Body Axis Rotation
Righting Reaction
(1)Righting Reactionに関する基本解釈
(2)Righting Reactionの解剖学的考察
重心移動 Weight Shift
(1)重心移動の基本解釈
(2)重心移動のメカニズム
寝返り動作のまとめ 観察のポイント
第2章 起き上がり動作の臨床バイオメカニクス
動作概要
動作のシークエンス
On Elbowを可能にするメカニズム
体幹の回転軌道の修正の機能解剖
肩甲帯の安定性Shoulder Girdle Stability
(1)第3相で求められる肩甲帯の安定性
(2)前鋸筋-菱形筋の複合体と僧帽筋
(3)肩甲上腕関節の安定性
手根-前腕-上腕-肩甲骨-胸郭の連結
体重移動
寝返り動作のまとめ 観察のポイント