■研修会報告

肩関節の機能解剖と疾患・実際の治療についてin神戸

鶴田 崇 先生
(南川整形外科病院リハビリテーション部課長代理)
~肩関節の疾患の評価と研究的知見から診た治療選択~

■【研修会後記】
■肩関節の評価例

視診(筋の萎縮・肩甲骨の偏位・肩甲骨のwinging)、Tenderness、関節可動域運動(関節包が伸張される方向・肩甲骨の動きを把握した上で)、肢位別での筋力評価(姿勢に問題があるのか、肩関節周囲に問題があるのか)、肩甲骨を固定し腱板機能・肩甲胸郭関節機能不全の評価等…

肩関節を評価するにあたって、肢位別での評価、肩関節周囲の筋・靭帯・関節包・関節にかかるストレスを考慮し、姿勢アライメントを変化させた上での評価など、多くの情報を踏まえた上での評価の重要性を訴えられる。

加えて、上記の

・肩関節運動を超音波画像
・レントゲン画像・関節内視鏡
・筋電図など可視化
・数値化できる評価

で捉え、実際の動きに解剖学的・運動学的情報を加えた上で根拠のある評価方法で提示される。
評価するにあたっては、患者様の動きやすさを追求し、個々に肢位・姿勢を変えて評価する必要がある。データでの傾向と、実際の患者様の状態では異なり、動きやすさも人それぞれである。

全身を診ることも重要だが、やはり、『肩関節』という局所の動きを細かくみる必要性がある。

■肩関節に対する治療戦略の一部紹介

術後介入にあたって


・治療開始肢位の設定
・肩甲骨周囲筋群へのアプローチ時期
・負荷量の設定、患側肩関節への負荷量
・重心位置変化

を考慮した上での両側上肢運動の検討など、筋電図・超音波画像にて根拠のあるデータを提示され、治療戦略をより明確にされている。

目的としては、肩関節に余分な不可をかけず、アウターマッスルの使用を抑え腱板機能の活性化を図ることである。

患者様に自宅でのトレーニングを指導する上では、ADLの場面でどれだけ簡易的に、且つ毎日継続できるかが重要であると訴えられる。

■講義まとめ

・下垂位腱板訓練時の前腕肢位の違いによる上腕二頭筋の筋厚変化率を超音波画像にて比較・検討。
・全ての運動方向と負荷において、前腕回内位時が中間位、回外位と比較して、有意に上腕二頭筋の筋厚変化率が少ない。
・前腕回内位は、選択的に腱板の訓練が可能。
・アウターマッスルとの筋バランスを改善するのに有効な自主トレーニング方法。

高濱 照先生(九州中央リハビリテーション学院)
〜肩関節周囲筋の触診と治療方法〜

■【研修会後記】

■本当にそこが痛いのか?決めつけてはいないか?

・人体解剖による肩関節の関節
・筋
・靭帯
・関節包の構造

参加者の皆さまは、個々に肩関節周囲を触ったり動かしたりして、先生の話に耳を傾け一緒に感じようとする姿が見受けられます。
教科書や参考書に載っている評価では、まだまだ局所評価は足りない。
本当にそこが痛いのか?決めつけてはいないか?

という疑問を常に自分の心に問いかけ検証していく必要があると。そして、その検証をするには、
やはり知識と触診の技術が重要であるとのこと。

■講演流れ

人体解剖を通して

・臼蓋周辺の説明
・肩甲下滑液包
・中臼蓋上腕靭帯
・上腕二等筋長頭腱腱鞘
・鎖骨
・肩甲下滑液包
・棘上筋の解剖学的

な視点からの見解。
また、肩甲下筋下部繊維による挙上制限、野球選手における外旋拡大と内旋制限の原因、肩関節水平内転における前方の詰まり感について等、症例や被験者を通して研究されている内容でした。

■棘上筋とは

・折り畳まれた構造をしている。肩峰の前方端と上角に折り目がある。
・棘上筋腱と烏口上腕靭帯は並行になっている。その前に烏口突起があるため、棘上筋は直接、烏口突起には当たらない。
・筋は肩甲棘の上で触診できる。圧迫と揉捏を加えながら。
・肩関節の伸展は、30°程度まで肩甲上腕関節。その後は、肩甲骨の動きを伴う。

■肩甲下筋とは

・肩甲下筋は5束で成り立っている。
・下部繊維は内転筋の作用がある。
・肩関節外転時、SHA=110°とする。その後、肩甲下筋下部繊維の起始を外すと、SHA=160°まで拡大。よって、肩関節屈曲時の制限因子となる。
・小円筋は挙上時に外旋すれば緩む。よって、肩関節屈曲に伴い、上腕骨が外旋すると小円筋は緩むため、制限因子ではない。2ndの内旋で制限因子となる。

■講義まとめ

肩関節構造のイメージ化を図った所で肩甲下筋の触診へ

触診方法として、肩甲下筋下部線維(背臥位)の中枢部は肩関節下垂位で腋窩部に、末梢部は肩関節挙上位で腋窩部に触診可能。
肩甲下筋上部線維(側臥位)は結帯動作の肢位で、

肩甲骨内側縁→肩甲骨前面

に向かって触診可能とのこと。ダイレクトストレッチが有効とされている肩甲下筋を触診するには、とにかく
練習あるのみと....
その後も、触診は続く。人体解剖により肩関節構造を捉えた上での、制限因子の追求と治療方法の選択は、説得力があり圧巻の講義内容でした。



肩関節の機能解剖と疾患・実際の治療についてin神戸

AM(10:00~12:00)
  肩関節疾患の評価と研究的知見からみた治療選択
  南川整形外科 理学療法士 鶴田 崇先生

PM (13:00~16:00)
  肩関節の機能解剖と痛みの治療について
  〜肩関節周囲筋の触診と治療方法〜
  九州中央リハビリテーション学院 学科長 高濱照先生

講師
南川整形外科 理学療法士:鶴田 崇 先生
九州中央リハビリテーション学院 学科長:高濱 照 先生