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石井 慎一郎 先生

歩行を力学的視点から斬る!

 歩行の3つの回転軸はなぜ必要なのか?それをつきつめないと異常歩行は語れない。
 だが実は種々の文献にもその原因は明確にされていないのである。
そのなかでもHeel Rockerは関節でなく、関節外で回転軸を設ける。歩行の進化と照らし合わせてこれはミステリアスな事実と石井先生は語る。
ICの際の衝撃吸収は体中のすべての筋を動員して衝撃を吸収しようとし、これらすべて遠心性収縮を使う。・・・・どこも重心を前方へ回転させる関節が存在しないことになる。
 そうすると、衝撃吸収>重心移動となりエネルギー効率は悪い。
 つまり、かかとの形状で身体を前方へ移動させる働きを担っている。

重力と戦い・重力を味方につける!
 歩行など抗重力の動きに着目しがちだ。
 しかし、重力の影響を受けない無重力環境ではうまく歩行できないのだ。
 つまり、
 重心移動を制御するには・・・足部がポイント!!!












目的はスムースな重心移動能力。
 感覚を取りに行ける能力が重要と石井先生。足部のモビリティーが十分になければ制御に必要な情報が不足してしまう。
 末梢の感覚を大切にすることで多関節の運動に変化がもたらされる。途中、受講者の皆さんに足部のモビライゼーションを促すことで実感していただけたと思う。全員参加型の講義も石井先生の特徴。

歩行は揺れながら動く!
 揺れながら動く自由度の高い動きだ。ゆえにエクササイズにも工夫が必要。現在多くのセラピストが取り組む高齢者の転倒予防についても、静的なアプローチが多いことにも警鐘を鳴らす。ステップ ストッピングの様な静と動を組み合わせたアプローチを提案された。












動きのある講義!
 壇上で常に動く石井先生。とにかく動く!
 頭脳と運動がリンクすることで受講者の頭脳へ届く。
 解りやすく離れていても近く感じる講義が石井先生の講義の持ち味だ。
 また、いずれも明日の臨床へ活かせる内容が多くその点でも多くのセラピストに支持を受けている理由の一つである。


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上島 正光 先生

治せないのはなぜか?

 結果を出すセラピーを念頭に駆け抜けたPT一年目。
 しかし短期的な結果は出せても、長期的変化に乏しいことに気づく。
 そこで局所の治療ではいわゆる「障害」の改善にはつながらない。
 対象者の運動パターンを変えることが、治療の本質と振り返って結論づけた。


対象者の運動を変化させるためのツールとして
 入谷式足底板を用いる治療介入を開始。
 「マニアックです」と表現するが、自称マニアといえるほど足底板を通した治療に没頭。
 足の操作によって疼痛や動作の変化を機能評価することに惹かれる。
 それを通して運動学的な考えが治療の骨格であるということが解ってきた。

数ミリの変化が動作を変える。
 2,3ミリの操作が患者さんの動作を変容させる。
 足底を操作する範囲は8つ。足部の関節をテーピングやパッドを用いて評価していく。
 実際にパッドを手にとってみると、厚みはわずかだ。
 その足底2,3ミリの厚みの変化だが、もちろん評価の視点は身体全体。
 各歩行フェーズごとでの変化をみて解釈を行う。変化を追えるセラピストの「眼」が大切である。

















足底板を作成することにはこだわらない!
 運動学的な思考が治療の骨格であるため、ヒトの歩行や動作を分析することが鍵だ。
 分析から、足底板を選択するのも一手段ではあるが、いろいろな手段を結びつけて治療に介入することが大切だと上島先生。運動学的な視点はベーシックだが、それ故に奥が深い。
 現在はそういった操作に加えて、インソールの堅さに関しても研究を続けており、今後の展開にも大きな期待が寄せられる。

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尾田 貴雄 先生

靴づくりのスペシャリストとして

無回転シュートを支えるミズノのテクノロジー。
超高速カメラで撮影された映像に黄色のミズノのスパイク。
ワールドカップで話題になっている無回転シュートは足もとにも秘密があった。
あくまで選手の意見を尊重して開発していくのがポリシー。
 高いパフォーマンスを生み出すためには、1906年から培われた「社会貢献」の理念が後ろ盾になっている。



アウトカムは高く。
元来は経験・勘がシューズ作りを支えてきた。
時代の流れに沿って、科学的な根拠を基にしたシューズの開発となった。
つまり、現代の医学によく似た変遷をたどっていくことに気づく。
 社会貢献という会社理念に基づき、顧客の満足度を得るには、やはりEvidenceに基づいた製品の開発や提供が欠かせない。
 人間の歩行を分析し、製品(動作解析・床反力計測・筋電図計測等)開発につなげることは、我々セラピストの評価・治療プロセスと何ら変わりない印象だ。

プロネーションをコントロールせよ!
 尾田先生が足の動きで強調されたのは足関節回内(プロネーション)であった。
プロネーションは生体内で正常に生じる動きで、衝撃緩和機能である。しかし繰り返しが続くことでメカニカルストレスとなる。
 セラピストは身体の動作の変化によって、その障害を回避させようとするが、プロネーションを押さえるための素材・構造で回避をはかる。接地した際の安定感が足関節を制御し、股関節や膝関節などの多関節に障害を防いでいる。 
 手法は違うがストレスのない歩行というアウトカムは一致する。

















そして、これから。
会場では質問をするセラピストの姿を多くみかけた。
ものづくりにセラピストが積極的に関わっていく時代も近いのではと感じた。

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樋口 貴広 先生

私は文学部出身です。

 樋口先生は東北大学文学部出身。文学博士。
 一見セラピストとは縁遠い印象を受けるが、先生の研究室にはセラピストが多数所属している。
 知覚や認知を突き詰める上で、カナダへ留学しバイオメカニクスの分野を研究。
 知覚や認知が運動とどう関わり合っているのか?脳の働きを知ることで、運動や動作の本質がわかる。
 その点でセラピストが樋口先生を師事する理由があるのだろう。

視覚を遮断せよ!
視覚が他の感覚と比較して人間の動作に及ぼす影響は大きい。しかしそのほかの感覚による情報を統合することによって運動を企画することが可能である。つまり、脳の中での処理、認知を研究にて推測しなければならない。心理・認知機能・感覚・運動など、多数のパラメータを統合して推測する。脳というスーパーコンピュータを人間が解析しているような研究を樋口先生は行っている。

何を見ている?
 セラピストとして患者さんが環境に適応しながら安全に歩行できるか考えることは当然でである。また、特に高齢者では障害物などの環境の変化に対応できず転倒する症例を多く目にする。そういった障害物に対応するために人間は視覚情報をどのように活かしているのか?
 障害物への接近にともない、障害物直前の歩数で視覚を遮断することによるまたぎ動作の成績を研究。その結果では障害物に対して1歩前に遮断した場合は動作に影響はなく、2歩前では障害物への接触回数に変化はない。つまり、障害物に関する視覚情報はまたぎ動作の数歩前に終了しており、フィードフォワード様式の処理を脳は行っていることがわかった。また、障害物や悪路であっても視線は足元ではなく、数歩先にあるという研究結果も提示された。
















臨床に挑むにあたって!
 今回教示された研究は視覚に着目しているが、だからといって明日の臨床で直接視線を前方へ向けるような指示をしてはいけない、と先生は提言された。
 しかし、高齢者や脳卒中患者が対象の研究結果も多数提示され、臨床に活かせるエッセンスは数多くあると感じる。

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加藤 浩 先生

「Language shapes Thought」言語は思考を形作る。

 今日は普段皆さんが見ているが見えてない現象をお見せしたいと思います。
またはパソコン好きなので、様々な箇所でフリーソフトなどが垣間見られると思いますが、「おっ」と思われた方は、お気軽にお声掛けください。
 このような講習会に参加されている先生方は、非常に自己研鑽に励まれていると思います。しかし講師の方々の話を聞くだけだと、その講師の上を行くことはできません。だからこそ、その人が語っている「言葉」の背景を読み解き、その言葉に対して鋭く反応することが日々の臨床に反映できるようになるのだと思います。


表面筋電図
 筋が収縮すると筋線維ひとつひとつが放電する。それを拾い上げたものが表面筋電図。そして筋力トレーニングが中心だった今までの理学療法から、今後は「筋線維」を鍛える運動器理学療法に進んでいくだろうと予測されます。そしてそのためには何の目的で、どの筋線維に対してアプローチをするのかという詳細な視点が必要になります。そのためにも表面筋電図は非常に有用です。筋力は大別すると組織学的な要因、神経系要因の二つの要因から決定されているといえます。
 筋力と積分筋電図(IEMG)等尺性収縮においては正比例するので、筋に流れている電流を把握することで筋活動量を予測することができます。積分筋電図は横軸に時間をとるものでそれを周波数を基準に配置を変え並び替えたものであり、低周波帯はTypeⅠ線維、高周波帯はTYPEⅡ線維が活動することなどを確認することができます。積分筋電図は筋の電気的活動量を把握する量的評価、周波数解析はモータユニットの発火頻度や筋組成状況の把握などの活動状況を把握する質的評価だといえます。

歩行時における筋の質的評価
 FFTには臨床使用上、二つの欠点がありました。元データのないFFTのデータだけでは時間情報が欠落してしまうこと、および信号波形の定常性に欠けるため静的な状態の把握は可能ですが、動的な状況の把握は困難なことでした。これは動きを見ることが生業の理学療法士にとって致命的な欠点でしたが、それを補う解析手法がwavelet変換での計測方法です。

筋組織病態を探る
 股関節疾患患者の筋生検を行い、病気の進行に伴いTypeⅡ線維が少なくなり、また萎縮も顕著化する傾向が認められた。これは先行研究の結果とほぼ同様であり、変股症患者の中殿筋の組織学的特徴は健常者と筋線維組成比率や筋線維径において明らかに差があることが確認できました。

MPFRが語るもの
 歩行時の骨盤傾斜角はMPFRと外転筋力に非常に影響を受けることから、TypeⅡ繊維系はMPFRの増大に関与し、股関節疾患患者の歩行時骨盤角度変化は健常者と比べ至適角度から大きく逸脱しており、MPFRは前額面での評価すなわち骨盤傾斜やTypeⅡ線維の把握に関して有用であると考えられます。

骨盤アライメントの影響
 股関節屈曲拘縮が著明な患者では、片脚立位の際に大殿筋優位の筋活動が確認できるので、患者さんに筋力トレーニングを実施する際には、各々のアライメントをニュートラルに整えた後にトレーニングを実施しないと、こちらが求めている効果が得られにくいと考えます。立ち上がりの際にも重心位置を調整することで、床反力ベクトルをコントロールし、大腿直筋優位の立ち上がりパターンなどに誘導することができます。床反力のベクトルの角度は動筋・拮抗筋の収縮効率に作用することは非常に重要なことだといえます。

二関節筋と単関節筋
 股関節疾患患者の腹臥位での内外旋運動は健常人と比較し大腿筋膜張筋などの表層の筋への依存度が非常に高く、運動自体も拙劣です。つまり、日常的に痛みがありそれを避けるために防御的筋収縮が出現し、円滑な運動が困難な状態に陥ってしまっていると思われます。そのため筋疲労を生じ股関節周囲のだるさや痛みなどを生じる原因にもなっています。

運動器疾患の障害像の捉え方
 局所で捉えるか、全身で捉えるかはどちらも重要で、理学療法士としてはどちらの視点も必要となります。まずは、局所をしっかり見ること、そしてそれを全身に広げていくことで新しい評価体系が構築できるのではないかと考えます。














講義を終えて
 開始当初は生理学で習う内容の話からスタートしていきましたが、いつの間にかEMGの話、動作の話と展開し引き込まれていきました。多くの研究データや動画などを用いて階段を一歩ずつ上るために、少しずつ導き、気付くと知らないうちに1つのフロアを上がっている。そのような内容のご講演でした。

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大槻 利夫 先生

「片麻痺患者の歩行と治療」~最新の知見から~

脳卒中のリハビリテーション
 個人(個性)・課題・環境の3つが相互に関連していく中から、治療のための分析・仮説・治療方法が出てくる。
 脳卒中患者の姿勢から次にどのようにその人が動くかを予測していくことが大切であり、事前に予測しておくことで次に起こる動作に対して、どのように介助するのか?どのような指示を出すのか?これらを少し考えていくだけで、次の動作がスムーズに実施可能となる。だからこそセラピストとして「予測する」ということは当たり前にやっておかなければならないことである。


脳卒中の歩行獲得のために
 急性期の多くの患者は再び歩けるようになることを第1の目標とし、そのためには非麻痺側が1歩踏み出せなくてはならない。その1歩を踏み出すためには、まず2本足で立てることが大前提である。その中で、姿勢制御を可能にするには上肢の参加も不可欠である。しっかりと2本足で立つということをまずは作っていくべきである。

バランスに対して
 感覚に対して働きかけていくことが重要であり、セラピストの感覚と患者の感覚を共有できるようにハンドリングを工夫すべきである。患者を動かすのではなく、患者が動けるようにセラピスト自身が動かなくてはならない。セラピスト自身が繊細に感じることができるようになるべきである。

神経学的にみた歩行
 神経学的に、体幹の制御はフィードフォワード制御であり、下肢の制御はフィードバック制御となっている。神経経路は同じなのに、地面に接地するか否かで違いが出現し、それぞれに違った対応が求められる。
 歩行の神経機構として、脳が全体的に働かないとうまく成り立たない。脳幹の歩行誘発野、CPG、基底核、大脳皮質、小脳などそれぞれが役割を持ち、うまく協調して働くことで歩行が成り立っている。

一側下肢を振り出すために
 1次運動野の興奮によって、皮質脊髄路が延髄で交差して、振り出し側の下肢を屈曲するという流れが一般的である。しかし、それ以前にも下肢を振り出すための準備はされており、橋網様体脊髄路により、支持側の伸展が要求される。その後、振り出し側の伸筋を抑制し、振り出しやすい形にした後に、やっと屈筋の興奮が始まる。歩行を始めるという単純に思える動作においても複雑な神経制御がなされている。


自立的な体幹の姿勢制御
 脳幹網様体が担っており、経路の違いにより機能も異なる。それに加えて、末梢の皮膚と固有受容器からの求心性神経が、バランスを保ち、歩行に関するサイクルに安定を与える重要な機能がある。
 患者では、同側の肩甲帯と股関節を制御することが困難であり、特に非麻痺側への体重移動時にやじろべぇのように上半身重心を傾けてしまう。そういった体重の移動に上肢でしっかりと支えてしまうと、能動的な体幹の運動が阻害されてしまうため、軽く支持面に触れておく程度の支えが能動的に体幹機能を使っていくことに有効である。


足部の重要性
 唯一地面と接地する足部を機能的に使えるようにしていかなければならない。臨床的に足部を固めてしまっている患者は多く、足趾の柔軟性やアーチの形成など機能的な足部を作っていくことでロッカーファンクションが機能していく。それに伴って、初期接地時の大殿筋と立脚終期の下腿三頭筋が重要な機能を有しており、足部機能の改善と同時に改善していくべき点である。














講義を終えて
 常に患者さんから学びましょう、患者さんを全人的に治療していく姿勢を常にもちましょうなど、5つの事柄をリハビリテーションセンターの理念として掲げ、患者さんの笑顔を共有できるようなセラピストでありたいという大槻先生の姿勢は、学ぶべきところが非
常に多くあり、経験年数を重ねても忘れてはいけない最も大切なことだと感じました。参加者を引き込むような大槻先生の柔らかい雰囲気で、講義も難しいと感じていた部分を分かりやすく説明して頂き、もやもやしていたものが少し理解できたように感じる講義でした。

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受講者の感想

歩行フォーラムin神戸を受講して

広島大学大学院保健学研究科 八木優英

年の春より非常勤ではありますが病院で働き始め、「歩行」を観察する機会が増え、その度に「どこが悪いか分からない」、「何を見たらいいか分からない」といった様に漠然とした疑問を抱いていました。本や文献をいくつか読んでみたものの、絵ではイメージにしづらい部分もありました。歩行フォーラムでは正常な歩行についてと異常な歩行をどう考えるかについて学びたいと思い、受講させて頂きました。



行フォーラムでは理学療法のみならず、多分野の専門家の先生方からの講義を聴けました。どの先生の講義内容も分かりやすく、丁寧な講義をして下さりました。授業内容は、どれも非常に内容の濃いもので、受講以前の私の抱いていた疑問が「そういうことだったのか」と、面白いように解決されていきました。特に「股関節疾患患者の歩行障害の特徴と理学療法戦略」の加藤浩先生と「知覚・認知が歩行に及ぼす影響について」の樋口貴広先生の講義は私にとって、新しい考え方が多く、非常に興味深い内容でした。加藤先生の講義では、学校の授業で習うMMTなどの筋力測定時や歩行中の筋活動量を、目に見える形で表現できる筋電図を使用し、それを基にした科学的で明確な評価方法や治療方法に感動させられました。さらに筋とは何か、筋電図とは何かといった様に基本的な用語の説明から丁寧に講義をして頂き、知識の確認も行うことができ、非常に有意義な講義でした。樋口先生の講義では、私が日頃あまり気にとめていなかった、身体運動への認知機能の影響を教えて頂きました。体が動くだけでは正常な運動は出来ないことがあると分かりました。これまで自分は身体機能ばかりを考えていたので、今後注意すべきだと強く感じました。



行フォーラムで講義をされた先生方の豊富な知識と優れた技術を目の当たりにし、自分がどういった勉強をすべきであるかということを再認識させられ、勉強意欲を駆り立てられる勉強会となりました。



の勉強会では、Senstyleのスタッフの方々が、受講前の連絡、当日の進行などにおいて細部にまで配慮の行き届いた運営をされており、感心させられるとともに、再び勉強会に参加させて頂きたいと強く感じました。本当にありがとうございました。

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石井先生
上島先生
尾田先生
樋口先生
加藤先生
大槻先生

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