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石井美和子 先生





『二足歩行とコア』

Physiolink   
石井美和子 先生


<荷重環境下での体幹>





 歩行におけるコアの機能はあまり注目されていなかった印象があり、四足歩行から二足歩行への進化において、骨形態だけでなく筋の形態も変化している部分があり、特に二足歩行に必要な筋が進化している。
 重力環境下における体幹は負荷(重力と運動によって生じる力)に対応して、自在に対応できることが重要である。また、関節の肢位および運動として、負荷が正しく伝わる状態が保たれていることも重要である。
 負荷を正しく伝えていくために、土台として骨盤のアライメントが重要である。特に仙腸関節のアライメントは適度にロックされているぐらいが適切だと考える。うまく荷重伝達を上位に伝えるための骨盤帯をまずは作っていく必要がある。それに対して、脊椎や胸郭の動きを評価していく。脊椎では各分節において回転あるいは並進運動が過剰に生じていないか、胸郭においては12のリングが蛇腹様に動いて逸脱した動きをしている部分がないかなどをみていく。





<歩行時の体幹運動>







 歩行動作中の骨盤帯の運動は、左足のICを想定すると絶対的な空間では骨盤帯は右回旋の動きを観察することができる。骨盤帯内の動きをみていくと、寛骨と仙骨の関係性は左回旋を呈すように触察 することができるのではないかと考える。それは、大腿骨の動きを中心に考えていったときに、股関節屈伸の動きに対して寛骨の動きを考えていくことで理解できるところである。
 Passengerとして効率の良い歩行を形成していくためには、骨盤より上位の体節が下肢上でニュートラルポジションがとれ、さらにそのポジションをキープするために各筋が適切なタイミングで活動する必要がある。









<下肢との連動性>

 脊柱・骨盤の能動的支持システムを考えていくと、いわゆるコアマッスルといわれる筋の中で体幹と下肢をつなぐキーマッスルとして腸腰筋が挙げられる。一説によると腸腰筋は歩行中の腰椎のコントローラーといわれており、股関節の前方変位や腰椎の変位をうまく制動している。
歩行中に腸腰筋が働くphaseは立脚中期~後期にかけてである。前方への推進力に対して腸腰筋が骨盤帯から腰椎を制御しながらpassengerの安定性を確保している。その作用がしっかりと働けるためには立脚初期から中期までに重心を上方へ持ち上げる機能ができて初めて腸腰筋の機能が発揮される。



























<治療介入のヒント>




 歩行動作をみていく上で、まずは立位姿勢のストラテジーを確認していくところから始めることが多い。立位において重力方向に対して少量の加圧をして身体の撓みを感じていくもので、実際の歩行動作においてもどちらの立脚相でどの方向に崩れるかなどをみていく。
 歩行動作につなげていくためには、片脚立ちでの身体の反応をみていくことも有用である。仙腸関節の位置関係や胸郭のリングや股関節軸の変位などが不安定な方向へ動いていないかを確認していく。その中で、もっとも早期に問題のあるストラテジーを呈する動きを断定し、さらにそこを詳しく動きを評価していく。そして、どの組織に治療を実施していくかを決定していく。



























<講義を終えて>




 歩行動作において脊椎や骨盤帯、胸郭の解剖学や運動学を細かく考えていく機会は非常に少なく感じます。今回の講義は今までの考えよりもっと細かいところの動きまで評価していく必要があり、そこが治療介入のヒントになり得るものだと感じました。
 視診ではわからないが、触察で感じる小さな動きをもっと丁寧に感じれるように繊細な評価を心がけていこうと感じる講義でした。

湯田 健二 先生




『下肢からみた歩行バイオメカニクスと臨床アプローチ』

~体幹から下肢へ~

海老名総合病院
湯田健二 先生

〈立脚初期のポイント〉




 立脚初期において「衝撃緩衝」と「COGの受け入れ」という大きな課題が2つある。約1cmの高さから落ちる重心に対して、下肢の各関節が衝撃緩衝のための対応を始める。
Loading Responseにおいて、前脛骨筋の遠心性収縮から大腿広筋群の遠心性収縮、大殿筋下部線維と大内転筋の求心性収縮によって落下する重心を前方への推進力へと変換させる。
 立脚初期では、まず足部から衝撃緩衝を実施していく。踵骨の床との接触点と荷重線をみていくと、接触点と荷重線の発生する位置が違う。このことより、立脚初期では正常歩行においても距骨下関節は衝撃吸収のために回内位を呈する。





〈運動連鎖的観点〉





 運動連鎖を考えていくにあたって、距骨下関節に代表される距骨と下腿のリンク機構を捉えておく必要がある。下降性運動連鎖と上降性運動連鎖の双方から考えていく必要があり、立脚初期での距骨下関節回内で距骨と下腿の動きはリンク機構によって連動して働くが、その現象に対してどこで動きを合わせていくかは個人差が出る。
例えば、変形性股関節症の患者さんでは股関節機能が低下しており、前捻角が強い状態がさらに距骨下関節の過剰回内を強めるケースは少なくない。上からの影響も下からの影響もしっかりと捉えて動作を分析していく必要がある。

















〈立脚中期から後期のポイント〉




 立脚中期において、下肢が直立化していくことが重要である。立脚初期において、下腿が前方へいきすぎないように下腿三頭筋が遠心性収縮を行うことで大腿が慣性力の影響で下腿の上に直立化していく。
 距骨下関節においても、回内位から回外位へと変化して強い足部を作っていくことで、その後行われる振り出しのための動力の蓄積が行われる。そのために股関節の伸展がしっかりと出現することも必要な動力の蓄積である。立脚後期にいかにバネを作れているかで振り出しの動力は変化する。




















〈フォアフットロッカー〉




 立脚中期から後期にかけて、強い蹴りだし足を作っていくためにはフォアフットロッカーまでしっかりといくことが必須である。変形性股関節症の患者さんはよく反対側の外反母趾を呈しているが、患側がフォアフットロッカーまでいかないことで、重心の軌跡が変化して、健側の振り出しが不十分になってしまうからである。


























〈講義を終えて〉




 デモンストレーションを交えた講義は参加者と一体になって飽きさせない講義でした。1つでも有用な情報を参加者に持って帰って欲しいという気持ちが伝わり、一生懸命説明される姿はとても印象的でした。
 歩行における身体の対応を運動連鎖的な解釈で説明して頂き、特に足関節と股関節の両方向からの評価は治療ターゲットを特定していく過程において重要な作業だと感じました。











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