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石井 慎一郎 先生





『歩行の姿勢・運動制御とバイオメカニクス』


~運動制御理論から考える歩行障害の理学療法~

神奈川県立保健福祉大学  
石井 慎一郎 先生


<自律二足動歩行の制御>







自律二足歩行とは・・・
 自律歩行:環境を認識して外部からの支援を受けずに姿勢を制御し歩く歩行様式
 静歩行:重心位置を安定に保ち、バランスを取りながら歩く歩行様式
     支持基底面内に常に重心が存在する
 動歩行:重心の移動を予測して、動的なバランスを取って歩く歩行様式
     支持基底面内に重心が存在するとは限らない

私達がいつもおこなっている正常歩行は動歩行が基本であり、常に不安定な状態にある。重心は両脚支持期の短期間しか支持面に入れない。

身体運動の制御方式
・フィードバック運動制御
計画した軌道と実際の軌道のズレを遂次フィードバックしながら修正を加え、できるだけそれらの誤差を小さくするように運動を行う制御方式。体性感覚で30〜50msec程度、視覚では100msec以上のフィードバック時間の遅れが生じるため、1秒を切るような速いなめらかな運動に対応することはできない。

・フィードフォワード運動制御
あらかじめ目的とする運動に必要な運動指令を脳内で計算しておき、フィードバック情報に頼ることなく運動を遂行する制御方式。中枢神経系内に筋骨格系のダイナミクス情報が前もって存在しなければならない。これを「内部モデル」と呼ぶ。内部モデルに相当する情報は主に小脳に保持されていると考えられており、内部モデルの情報を利用することにより、軌道に見合った運動指令の計算(逆モデル)や逆に運動指令からの軌道の推定(順モデル)ができる。

動歩行を可能にするにはフィードフォワード制御でシステム化された筋活動のパターン生成を行う必要がある。






<S字波動運動〜ナメクジウオを例にあげて〜>





 爬虫類も哺乳類も運動の原型はS字波動運動である。ナメクジウオの脊索は中空で関節構造はなく、神経索は脊索にそって伸びているが脳はない。
 S字波動運動によるナメクジウオの前進は適当な筋束長を持った拮抗筋配列を制御する神経回路が必要。
筋収縮部が伝播して波動運動を再現するために機能的単位筋が少し位置を縦方向にずらして配列される。前方向にも後方向にも鏡像的に対称な運動を可能にするために、左右だけではなく前後方向にも対称的に筋が配列される。











<Central Pattern Generator>






筋活動の切り替え
 歩行時、伸筋群と屈筋群の交代は立脚中期で行われる。CPGによって生成される筋活動と関節運動とは一致していない。
ではどうやって関節を動かしているのだろうか。それは重力を利用しており、ヒトは位置エネルギーと運動エネルギーを相互に変換しながら歩く。歩行中の関節運動は自分の意志で動かいているのではなく、重力により半強制的に動かされている。CPGはその位置エネルギーに筋で制御要はブレーキをかける役割である。

 立脚中期に「重心を高い位置に持ち上げる」「膝関節が伸展位」「股関節の真上に重心が位置する」この3つを達成されることが出来ればCPGを利用した動歩行が可能となる。











<講義を終えて>




 講義内容でのkey pointは「立脚中期での位置エネルギーの利用」ということで、上で挙げた3つの事柄が達成されればCPGを活用できた歩行が可能となり、その歩行を獲得しなければならないとのことだった。
レクチャーの場面では、会場にあまりスペースがないことからステージ上にも参加者の方々が登壇するというおもしろい光景も見受けられた。
 豪雨による天候の悪い中、多くの方々が参加され自分のスキルを磨くための情熱がとても伝わってきた。その情熱に応えるかのように石井先生の講義にも熱が入っているように感じた研修会であった。


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