講師:加藤 浩先生
九州看護福祉大学看護福祉学部リハビリテーション学科 教授
「究める股・膝変性疾患の歩行分析」
理学療法において歩行分析が重要視されるのは何故であろう?
歩行(gait)とはあらゆる動物の中で我々人類のみが享受された高度に自動化された移動手段である.定義的にはヒトが空間的移動を行う運動であり,姿勢や四肢の運動形態もその対象とされている.つまり歩行とは人間のあらゆる身体能力の統合とコントロールにより達成された質の高い運動である.それゆえ,歩行分析で正常ベースからの逸脱を1つ発見することは,そこから多くの身体機能の情報を読み取ることにつながっているのである.今回の講演では股関節・膝関節OA患者の症例を呈示しながら,普段の観察だけでは見いだしにくい障害(impairment)特性を紹介しながら歩行分析を通して臨床思考を究めてみたい.
講師:宮本 梓先生
慶友整形外科病院 リハビリテーション科 科長
「末期変形性股関節症の病態から考える臨床思考」
末期変形性股関節症の治療は,理学療法を中心とした保存療法と,THAなどによる観血的療法に大別される.我々理学療法士にとって,理学療法によって疼痛や機能障害の軽減を図ることが最大の益であるが,理学療法の甲斐なく観血的療法に移行することは理学療法の敗北なのだろうか?患者にとって,最も良い治療は,最善の治療が最適に行われることである.そのためには,理学療法士が変形股関節症の病態を十分知ることが必要である.本講演では,手術時の所見等を交えて病態の理解をしたいと考え,理学療法に関しては,病態に基づく理学療法介入方法の適応と限界を考えたい.
講師:相澤 純也先生
東京医科歯科大学医学部附属病院スポーツ医学診療センター
アスレティックリハビリテーション部門部門長
「変形性股関節症患者に対するクリニカルリーズニングのエッセンス」
股関節症患者の主な臨床症状は股関節の痛み、運動制限、筋機能異常、荷重動作制限、精神的不安である。これらの症状を軽くしたいと願う患者の期待に応えるためには、主観的改善度を重視しながら、症状の原因を絞り込むためのリーズニングプロセスを理解し実践する必要がある。今回の講演では、安全で効果的な股関節症セラピーに結びつく基本的知識とリーズニングのエッセンスを示したい。
著書:
・極める変形性股関節症の理学療法(文光堂)2013
・ムーブメント-ファンクショナルムーブメントシステム:動作のスクリーニング,アセスメント,修正ストラテジー(ナップ)2014
・シンプル理学療法学シリーズ 中枢神経障害理学療法学テキスト(南江堂)2014
・シンプル理学療法学シリーズ 義肢装具学テキスト(南江堂)2013
・整形外科リハビリテーション(羊土社)2012
・股関節と骨盤のスポーツ傷害 プライマリー・ケアとリハビリテーション(三輪書店)2012
・頚部痛・肩こりのためのエクササイズとセルフケア(ナップ)2011
・PT臨床問題テク・ナビ・ガイド(MEDICAL VIEW)2011
・ティーチングピラティス-姿勢改善を目的とした実践ガイド-(ナップ)2010
・理学療法ハンドブック 改訂第4版.疾患別・理学療法基本プログラム(協同医書) 2010
・シンプル理学療法学シリーズ 日常生活活動学テキスト(南江堂)2010
・腰痛予防のためのエクササイズとセルフケア(ナップ)2009
・頚部障害の理学療法マネージメント(ナップ)2009
・理学療法士ポケット・レビュー帳(MEDICAL VIEW)2008
・理学療法フィールドノート2.運動器疾患(南江堂)2008
・理学療法ケーススタディー.良好/難渋例の臨床(中外医学社)2008
・イラスト理学療法ブラウン・ノート(MEDICAL VIEW)2007
講師:西上 智彦先生
甲南女子大学看護リハビリテーション学部理学療法学科 准教授
大阪大学大学院医学系研究科疼痛医学寄附講座 特任研究員
大阪大学医学部附属病院疼痛医療センター 非常勤理学療法士
「変形性関節症の痛みの解釈と理学療法」
変形性関節症症例が受診する理由は“痛み”が最も多い.変形性関節症症例が感じている・訴える“痛み”は単にバイオメカニクス的な問題からだけでなく,知覚-認知系(大脳皮質),情動系(辺縁系),下行性疼痛抑制系といった中枢神経系の変調によって“痛み”が修飾されていることがある.評価時に解剖学的・運動学的観点からの評価に加えて,中枢神経系を考慮した評価・解釈を加えることで,その結果に応じた治療を選択することが重要である.今回の講演では“変形性関節症症例”が“慢性痛症例”になる要因を概説し,評価・治療法を紹介する.
論文
1. Nishigami T, Nakano H, Osumi M, Tsujishita M, Mibu A, Ushida T: Central neural mechanisms of interindividual difference in discomfort during sensorimotor incongruence in healthy volunteers: an experimental study. Rheumatology (Oxford). 2014, in press.
2. Nishigami T, Osako Y, Ikeuchi M, Yuri K, Ushida T: Development of heat hyperalgesia and changes of TRPV1 and NGF expression in rat dorsal root ganglion following joint immobilization. Physiol Res. 2013, 62(2): 215-9.
3. Nishigami T, Okuno H, Nakano H, Omura Y, Osumi M, Shimizu ME, Tsujishita M, Mibu A, Ushida T: Effects of a hardness discrimination task in failed back surgery syndrome with severe low back pain and disturbed body image: case study. Journal of Novel Physiotherapies. 2012, S1-008.
4. Nishigami T, Ikeuchi M, Okanoue Y, Wakamatsu S, Matsuya A, Ishida K, Tani T, Ushida T: A pilot feasibility study for immediate relief of referred knee pain by hip traction in hip osteoarthritis. J Orthop Sci. 2012, 17(3): 328-30.
5. Nishigami T, Osako Y, Tanaka K, Yuri K, Kawasaki M, Ikemoto T, McLaughlin M, Ishida K, Tani T, Ushida T: Changes in calcitonin gene-related peptide expression following joint immobilization in rats. Neurosci Lett. 2009, 454(1): 97-100.