橈骨遠位端骨折後の拘縮手に対してのアプローチ


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橈骨遠位端骨折後の拘縮手に対してのアプローチ

橈骨遠位端骨折とは・・・

橈骨遠位端骨折は50歳代から増加し、60~70歳代がもっとも発生率の高い骨折である。特徴として、骨粗鬆症が大きな要因の1つであるため、女性に多くみられる。受傷機転は転倒によるものが多く高齢者の4大骨折の1つである。骨折の分類として、関節外骨折である骨片が背側に転位するColles骨折、掌側に転位するSmith骨折、関節内骨折として掌側Barton、背側Bartonなどに分類される。治療としてはギプス固定による保存療法、LockingPlateを用いた手術療法が選択される。リハビリテーションは後療法として行われる。

wrist.JPG図1

関節拘縮に対するアプローチ

橈骨遠位端骨折では術後早期からの介入、または早期運動療法が取り入れられているにも関わらず、指を含めた手関節の拘縮を目にすることが多い。拘縮の原因は、創部の皮膚性の癒着・腱性の癒着だけではない。痛みに対しての配慮不足から起こる、筋スパズムや滑膜炎がさらに拘縮を助長し、関節内での線維性の癒着に発展していると考えられる。さらに“関節のあそび”がない状態での無理な関節可動域訓練は変形性関節症を招くことにつながっていく。つまり、痛みを伴った状態での訓練が、可動域を減少させ拘縮を助長しているとも考えられる。
そこで、痛みの治療・関節可動域の拡大を目的として、プロテクノPNF(以下PNFとする)を使用した治療法を紹介したい。

① 双曲の粘着パッドを用いての治療方法

図1に粘着パッドの装着方法を示す。
この方法の利点は非常に容易に導入できることにある。電気刺激が苦手な方にも、PNFの刺激性の少ない電気特性が心地よさをもたらす。また、低周波に比べて、指先の組織量が少ない部位でも、高い電圧をかけることが可能であった。グラフ1に、ある症例の治療結果を示す。週に1回の治療を5週連続で行った結果、特にDIP関節での治療効果が高く、45.5°±6.4の可動域が52°±6.7と有意に改善した(t検定、P≦0.01)。

② グローブを用いての治療方法

つぎにグローブを用いた治療法の手順を示す。グローブを用いる利点は、関節のあそびを直接セラピストが感じながら治療を行える点にある。また、PNFの皮膚抵抗の少なさが、患者の電気刺激への抵抗を減らしてくれる。これにより痛みの軽減・治療時間の短縮を図ることが可能となる。これまでの物療機器は物理療法の時間+セラピー時間を必要としていた。しかし、PNFはそれらの時間を短縮できるだけではなく、同時に行うことで、治療効果の相乗を図ることができる。また、PNFを用いて可動域訓練を行うことは、痛みを最低限にとどめ、患者への負担を減らすことができるとともに、筋スパズムなどの発生を予防することが可能となる。実際に患者に施行した後の感想は、「非常に気持ちがよい」「伸びなくなっていた指が伸びた!!」というものであった。今後はこれらの効果に対しての科学的根拠を証明していきたいと考える。

伸筋側への治療方法

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屈筋側への治療方法

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関節の遊びを確認しながらの関節可動域訓練

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